【導入事例】1日12万食を支える「製造革新」の舞台裏:はなまるうどん千葉工場が挑んだロボット化の全貌

【この記事でわかること】


本記事では、「はなまるうどん」千葉工場(※現吉野家ホールディングス千葉工場)(千葉県佐倉市)における食品工場のロボット導入事例をもとに、
(1)製麺ラインの自動化・省人化をどのように実現した
(2)スカラロボットと6軸垂直多関節ロボットをどの工程に活用したか
(3)FA専門商社・京二がロボットシステムインテグレーター(SIer)とユーザーの間でどのような役割を担ったか
の3点を具体的に解説します。

食品工場の自動化において、真に求められているのはロボット単体の性能ではなく、現場の課題に即した「トータルソリューション」です。
セルフ式讃岐うどんのトップブランド「はなまるうどん」を展開する株式会社はなまる様。同社が全国5カ所に持つ製造拠点の中でも、主力かつ「製造革新のマザー工場」と位置付けられているのが千葉工場(千葉県佐倉市)です。1日平均約3,000ケース、食数にして約12万食という膨大な製麺を担い、有事の際には全社分を供給するバックアップ機能も備えたこの重要拠点で、私たち京二はロボットを活用したシステム構築を支援しました。

1. 「インライン化」と「ライン集約」による圧倒的な生産効率の追求

千葉工場における改革の柱は、設備を工程順に一直線に並べる「インライン化」でした。物の流れを一方向に限定して効率を極大化し、稼働率の向上と高速化を突き詰めることで、従来2本あった製造ラインを1本へと集約。この「攻めの集約」により、1ラインあたり通常2名、最大でも3名という極めて少人数でのオペレーションを実現しました。食品工場における製造ライン自動化・省人化の代表的な成功事例と言えます。

製麺工程は「粉を練る」「打つ」「寝かせる」「延す」「切る」というステップを踏みますが、特に讃岐うどんの生命線である「2時間以上の熟成(寝かせ)」という物理的な制約を、いかに自動化ラインの中で守りながら搬送制御するかが大きな課題でした。

2. 【特別インタビュー】製造現場のプロが語る、ロボット導入の「真の目的」

今回のプロジェクトを牽引した、株式会社吉野家ホールディングスグループ商品本部副本部長の吉川直樹氏に、導入の背景を伺いました。
※インタビュー当時はインタビュー当時は株式会社はなまる 執行役員 製造事業本部本部長

「欲しいのはロボット単体ではなく、解決策」

吉川氏は、目的はあくまで美味しいものの提供であり、そのために製造イノベーションに取り組むと語ります。そして求めているのはロボット単体ではなく、現場の課題を解決するトータルソリューションだと強調。ロボットは命令通りにしか動けないからこそ、どの工程を任せ、どこで人間が介在するかという設計思想こそが重要になると指摘します。

京二を選んだ理由

吉川氏はロボット導入パートナーへの期待として、立ち上げに手間がかかるロボットに付き合い、やりたいことの解決の糸口を見いだしながら、エンジニアリングの面倒も見て、技術をはじめさまざまな情報をもたらすことが商社の条件だと語ります。前職の半導体製造装置メーカー時代から培われた信頼関係があったからこそ、京二にロボットの案件で声をかけたと説明しています。

3. 「後工程」の自動化:不二越(NACHI)製ロボットが担う精密な作業

自動化の主戦場となったのは、製麺から出荷へと繋がる「後工程」です。食品工場のロボット導入においては後工程(ピッキング・パレタイジング)が自動化の起点になりやすく、ここでは役割の異なる2種類の不二越製産業用ロボットを導入しました。

ビニール包装麺の高速ピッキング(スカラロボット)

切り出された麺は正確に計量され、品質保持のための脱酸素剤と共にビニール包装されます。この包装麺を、製函機と連動して段ボール箱へ整然と詰めていくのがスカラロボットです。

重量物のパレタイジング(6軸垂直多関節ロボット)

箱詰めされた製品をパレットに積み上げる最終工程には、可搬質量の大きい6軸の垂直多関節ロボットを配置しました。人間にとって過酷な重量物のハンドリングをロボットが肩代わりすることで、現場の負担は劇的に軽減されました。

4. なぜ「商社(京二)」が生産技術の代行を担うのか

ロボットの導入は、既存ラインの変更や周辺装置との緻密な連携を強いるため、ユーザー側にも高度な知見が求められます。しかし、食品業界はロボットに「不案内」であることが少なくありません。

京二の代表・井口宗久は、商社の役割について次のように語っています。

『顧客の調達代行、生産技術代行』を基本コンセプトとする京二として、ロボットやシステムに不案内な顧客の手助けをしたい、お客さまとSIerの橋渡しをすべくマッチングの機能を高めていくという考え方です。

京二は、40年前から自動車メーカーの溶接工程などで培ったロボットの納入実績があります。その知見を活かし、現在はFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)にも入会。さらにSIer企業のエスイーテック社との業務提携により、初期の構想設計から請負、問題解決までを一貫してサポートできる体制を整えています。機械工具・FA機器の専門商社として長年培ってきた現場知識と人脈が、食品工場向けロボット導入支援の基盤となっています。

結びに:未来に向けた「垂直展開」と「水平展開」

千葉工場での成功をベースに、はなまる様では工場内でのさらなるロボット化(垂直展開)と、他拠点への展開(水平展開)を見据えています。

私たち京二も自動化・省人化機器分野でビジネス拡大を加速しており、ゆくゆくは特定マーケット向けのロボットハンドなどの独自製品開発にも乗り出す計画です。「夢のまた夢」かもしれませんが、お客様のビジネスモデル構築に貢献し続けることが、私たちの使命だと信じています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 食品工場へのロボット導入で、まずどの工程から自動化すべきですか?
A. はなまるうどん千葉工場の事例では、指令や制御がシンプルな「後工程」(出来上がったものの移動・搬送)から着手しました。具体的には、ビニール包装麺の箱詰め(ピッキング)と、段ボール箱をパレットに積み上げるパレタイジングの2工程です。ロボットは命令通りにしか動けないため、「指定の物を指定の量だけ指定の場所に置く」というシンプルな制御で完結する工程への導入が現実的とされています。

Q2. スカラロボットと6軸垂直多関節ロボットは食品工場でどう使い分けるのですか?
A. 千葉工場では、製造ライン内でのビニール包装麺のピッキングと箱詰めにスカラロボットを、箱詰め済み製品をパレットへ積み付けるパレタイジングには可搬質量の大きい6軸の垂直多関節ロボットを採用しました。人間にとって重労働となる重量物の取り回しを6軸ロボットで担うという考え方です。

Q3. ロボット導入においてSIer(システムインテグレーター)とFA商社の役割はどう違うのですか?
A. SIerは教示(ティーチング)作業や制御プログラムの作成といった実際のシステム構築を担います。一方、FA専門商社の京二は、ユーザーがロボットの使い方を知らない段階から、やりたいことに対するアプローチを一緒に考え、最適なロボットやSIerの選定・マッチングを行う役割を担います。ユーザーとSIerの間に立ち、初めの一歩をサポートするのがFA商社の機能です。